サッカーとピアノを熱く語る
サッカー番組を観ていて、あるいはサッカー雑誌を見ていて、「それは違うだろう!!」と感じる人。自己満足でピアノを弾いてる人。そんな人が語るブログ。
2008.09.15 (Mon)
西表島横断(縦断)記
今回2度目の西表島。
昨年、西表島の、海(魚、サンゴ)と、山(ジャングル、滝)と、川(カヤック、マングローブ)と、空(夕日、星空)と、暑さに、引き寄せられた私は、西表島にまだまだやり残した事があるような気がして、今年もまた来てしまった。
今回挑戦したのは、『西表島横断(縦断)』である。
ガイドは、島廻遊の長澤さん。
予約の際、マヤグスクの滝にも立ち寄りたい事を伝えた。
当日、8:30。
宿泊していた『いるもて荘』に迎えに来てくれた。
今回は何人で行くのかですかと聞いたところ、「1人ですよ。なかなか1日で横断しようって言う人は少ないですからね~。」
ということで、ガイドさんとマンツーマンだ。
9:00
浦内川からの遊覧船に乗り込み。
乗り込む前に、「何年か前に、1人で山に入った大学生が行方不明になってね、それが今でも見つかっていないんですよ。」とビビらされる。
なるほど。
確かに今からやろうとしている事はそういうことだ。
危険と隣り合わせであることも認識して、緊張感を持って臨まなければならない。
「左手に見えますのが、『オヒルギ』『メヒルギ』『ヤエヤマヒルギ』と言います~」という遊覧船ガイドの声を聞きながら、ひたすらストレッチ。
途中で足が痛くなったら山歩きも楽しめなくなるので、準備は入念に。

9:30
軍艦岩到着。
さあ、山歩きスタートだ!!
カンピレーの滝までは、きれいな遊歩道が続く道。
去年も行ったのでだいたい分かる。
マリュドゥの滝も去年見たので素通り、30分程でカンピレーの滝に到着。

ここからが未知の世界だ。
カンピレーの奥の、登山道の手前で少し休憩。
そういえば、虫除けもヒル除けも、持ってきていない。
大丈夫か!?と不安になるが、「まあなくても大丈夫ですよ。どれだけ対策してても、出るときは出るし、出ない時は出ませんから。」と長澤さん。
そっか、なら大丈夫と信じよう。
ここから先は、400mごとに里程標があり、1番から24番まであるという。

24番は横断道の出口にあるそうだ。
1番が登山口の入り口か、もしくは入ってからあったのかは忘れたが、単純に計算すると、登山道だけで約9kmはあるという計算になる。
この登山道入り口、えっ、こんなとこにあんの!?というところにある。
知っていないと素通りしてしまいそうだ。
そしていきなり急な傾斜。
二本足だけでは進めない。
必然的に、両手で木を掴んだりする必要が出てくる。
しかしこれがまた気の使う作業なのだ。
木の幹には、所々に、赤くて青い気持ち悪い色をしたヤエヤママルヤスデや、触れると強烈な痛みを伴うヤマンギ、等が気持ちよさそうに生息している。
自分の体重を支えようと、あるいはバランスを崩した時にとっさに木を掴むと、こいつらが待ち構えている可能性が充分にあるのだ。
『掴む木は、しっかり見てから掴め。』
これ、教訓。
そんなこんなで歩いていくと、イタジキ川との分岐点に辿り着く。
「横断道はこのまま浦内川に沿って進みます。そしてこちらのイタジキ川を行くとマヤグスクの滝があります。時間的には充分立ち寄る余裕がありますが、完全に寄り道になり、1時間ほどかかってしまいます。どうしますか??」
という長澤さんの確認の言葉。
「もちろん、滝に行きます!!」
ここまで来たからには、滝を拝まなければもったいない。
体力もまだまだ大丈夫!!
というわけで、イタジキ川をジャブジャブ歩いたり、岩場を飛び越えたりしながらマヤグスクの滝を目指す。
滝の直前はかなり細い道なっていて、・・・ていうか道か??これ・・・というような所を進む。
そして目の前に現れたマヤグスクの滝。

・・・しばし感動。

「滝の上まで行きましょうか。」
「えっ、上まで行けるんですか!?」
「結構簡単に行けますよ。階段状になってるでしょ??」
滝の右側をジャブジャブ登る。
ほほう、結構簡単だ。
滑りさえしなければ安全そうだ。

そして滝上に到着。
これまた良い眺めだ~!!

「島のほぼ真ん中にありますからね~、行きたくてもなかなか来れない滝ですよ、ここは。知る人が増えてきたのはごく最近かな。昔は名前すら無かった滝なんですよ。」
滝上で、長澤さんが用意してくれたおにぎりを食べる。
ぎっしり米が詰め込まれた米密度たっぷりのおにぎり。
うまいっ!!
うますぎるっ!!
その後、滝に打たれながら昼寝。
ジャングルの中の高い湿度で、高くなっていた体温が急激に下がっていく感じがする。

最高の気持ち良さ。
ここまでの道程の疲れも吹っ飛び、心も体もリフレッシュ!!
そういえば、長澤さんによると、西表島1日横断で、マヤグスクの滝上まで来たのは初めての経験らしい。
11:50
滝を降りる。
そして滝とさよなら。
またこの滝を見ることはあるのだろうか・・・いや、ないやろな。
再び、浦内川との分岐点に戻り、山道をひたすら歩く。
ここからが最大の難関だった。
普通に歩けないのだ。
途無き途を行く・・・
激しいアップダウン・・・
下に注意を向けていると、頭がガツン。
上に注意を向けると足元がぐらつく。
倒れている木をまたぐ。
倒れている木をくぐる。
ジャングルにいそうなバカデカいクモも、前方に巣を作って待ち構えている。
捕まるはずの木に、あの赤青いヤスデが・・・
高い湿度で、マヤグスクで下げたはずの体温がもうすでに上昇している。
暑い。
そうか、今からが一番暑い時間帯になるな・・・
少し気を抜くと、というよりもすぐに、ガイドの長澤さんが見えなくなる。
どっちだ?
左前方でガサガサと。
こっちか。
40分程歩いて、少し休憩。
いや~助かった~。
ここまで来ると、川の水もそのまま飲める。
「イタジキとの分岐から最初の1時間半ぐらいが、とても歩きにくくてきついんですよ。もう少し頑張ってくださいね。」
たしかにきつい。
しかし、これぐらいでないと張り合いがないのも確かだ。
西表のヤローどもめ、かかってきやがれ~!!
ふたたび歩き出す。
ひたすら途無き途を行く。
土砂崩れで、放置された工事現場のような場所も何箇所かある。
「一昨年の台風と、去年の大雨で、こうなったんですよ。大きな木も倒れましたし、おかげで、横断道はどんどん歩きにくくなってますね。」
そしてさらに40分程歩いて休憩。
体温を下げなければ。
この蒸し風呂で脱水症状になってしまう。
と、長澤さんのリュックからポカリの粉が。
「飲みますか??」
「飲みます飲みます~♪」
川の水で粉を溶かす。
それを2人の水筒の容器で溶かす。
そして飲む。
うまい~!!!!!
なんてうまいんだ。
体の欲するままに飲む。
どんだけ飲むねんっちゅうくらい飲む。
貴重な貴重な電解質摂取。
さすが山歩きを本職にしている方だ。
持参するのものが違う。
ちょっと生き返った。
さあ歩くぞ!!
まだまだ苦しい道が続く。
西表のジャングルが、私に試練を与える。
そしてまた40分程歩いて休憩。
残りのポカリを飲み干してしまう。
「次の休憩は少し長めに取ります。泳いだりできますよ。」
というその言葉に希望を持って、立ち上がる。
・・・立ち上がれ!!
ふと思うと、道がだいぶ歩きやすくなってきた。
慣れてきただけかな??
いや、そうでもない。
「よっこらしょ」という場所が減ってきているのは確かだ。
途中、右側でガサガサと音が。
長澤さんの方向と明らかに違う。
なんだ!?
足を止めて見てみる。
ガサガササッ
やはり何かいる。
デカイ。
とそこに黒い物体が姿を現す。
イノシシだ!!
長澤さんを呼ぶ!!
長澤さん戻ってくる。
しかし、その時にはすでに、奥に行ってしまった。
はっきりイノシシの形が見えた。
間違いなく、イノシシだった。
どうやら辺りを見回す余裕が出てきているようだ。
15:00前後、次の休憩場所に到着。
ジャングルの中の沼って感じの風景。

「泳ぎましょうか」と靴を脱ぎ始める。
お~、靴を脱ぐとこりゃスッとする。
なんとも言えない開放感。
沼に入る。
すぐに深くなる。
立ち泳ぎしながらも、水が気持ち良い。
浅瀬で座っていると、ちっこいエビが食いついてくる。
イタッ!!
「じっとしてると、エビが皮膚の角質層に食いついてくるんですよ。」
イタタタッ!!
かなりの数がいる。
てめーら、網ですくって、から揚げにしてやろうか!!
・・・網ないけど。
再び出発の準備。
靴を履きながら、
「そういえば今日はヒルが一匹も出ないですね。珍しいですよ。」
と長澤さん。
ラッキー♪
日頃の行いが良いからだな。
このまま最後まで出ないでくれと願う。
予定ではあと1時間とちょっとで登山道が終わり、林道に出るらしい。
林道に出れば、そこは車も通れる砂利道。
終わったも当然だ。
もうちょいだ、頑張れ自分!!
道がかなり歩きやすくなってきている。
明らかに。
気分的にも余裕が戻ってきた。
長澤さんとの歩きながらの会話も復活してくる。
と、長澤さんの足が止まる。
いつものクモの巣ではない。
「ここ、いますね。」
見るとそこは木の根っこの中といったところか。
「ハブです。」
よく見ると、顔がある。とぐろを巻いてウネウネしている。
確かにハブだ!!
昼間だからか、お休み中のハブだ。
初めてみた。
「どうしようかな~。」と長澤さん。
「何がですか?」
「こんな道の途中に巣を作ると、いずれ誰かが歩いた時に噛まれる可能性があるでしょ。ここで殺してしまおうかな~。」
なんという頼もしい言葉。
そしてリュックの中から出てきたのは鞘におさまったシャキーンというバカデカイのこぎり。
そのノコギリで、近くにあった竹のような硬い木を鋭く切り落とす。
その竹で殺るのか。
・・・しかし、ハブ、それを察知したのか、さらに奥に逃げてしまった。
「蛇類はね、背骨を折ると動けなくなるんだよ。だからこういうのでバシーっと体の中心を叩いてしまえば良いのさ。今度来た時またいたら仕留めないと。道のすぐ側に潜まれるのは本当に危険だからね。」
思いがけずの生ハブ遭遇。
やはり、危険生物だ。
里程標も20番台に突入し、いよいよ林道までもうすぐだ。
山道最後の休憩を取り、そしてまた歩く。
23番発見!!
あと400m!!
が、この400mが意外と長い。
疲れきっているこの足に、とどめを刺すように道が続く。
あっ、セマルハコガメ。
でも去年もっときれいな甲羅のやつを見た。
砂まみれやから、あんまし美しくない。
・・・本当にあと400mなのか!?
1キロぐらい歩いているのではないか!?
と、急に前が開けてきた。
お~、平坦な道が見える!!
出口か!?
・・・出口だ~!!!!
看板には入口と書いているが、ここは我々の登山道からの出口なのだ~!!
24番の里程標もある!!
山の中、歩ききったぞ~~ぉい!!!!!
(16:30)

充実感、達成感が湧き出てくる。
俺は歩いたのだ!!
西表島のジャングルを横断したのだ~!!
「少し行くと東屋と言われているベンチがありますから、そこで休憩しましょうか。」と長澤さん。

ここでも靴を脱いで休憩。
両足にマメができていて、痛いが、それよりも、この達成感の方が強い。
おっ、そういえばヒルは一匹も出なかったな。
何と言う運の良さ。
しかし、まだ行程は終わりではない。
さらにこの林道を、1時間半ほど歩かなければならないのだ。
これがまたきつかった。
すでに後半から気力で歩いているようなものだ。
ストライドは小さくなり、足の回転も遅い、足の裏のマメは気になる・・・
しかし、ガイドの長澤さんは淡々と同じペースで歩く。
ちょっと速いんじゃね??と思いながらも、最後に妥協はしたくないと思い、頑張って付いて行く。
・・・やたらと蝶が多い。
蝶の天然博物館のようだ。
そして歩いていくと・・・素晴らしい眺めの展望台が!!!!
ただひたすら緑の絨毯のようなジャングルの中に、仲間川が大きくうねっている。
その向こうにはもちろん海が見える。

・・・言葉を失う。
人間のちっぽけさ、西表島の雄大さを、強烈に感じる。
・・・・・・
その後もさらに林道を歩き、パパイアの木や、パッションフルーツの木、天然では世界に3箇所にしか生えていないというヤエヤマなんとかという木を見ながら、18:15頃、大富の、車で入れる所にまで着いた。
18:30
迎えの車に乗せてもらい、いるもて荘まで送ってもらった。
今回の経験で、精神面、体力面、共にかなり鍛えられたように感じる。
この先、何があっても、生きていけそうな気がする。
そんな素晴らしい思いにさせてくれた、この西表島に感謝したい。
そして、そんな西表島の山の中を、懇切丁寧に教えていただいた、島廻遊のガイド、長澤さんに、厚く厚く御礼申し上げたい。
長澤さんがいなければ、今日の1日は無かった。
本当にありがとうございました。
(→島廻遊のHP)
いるもて荘に帰ると、
同じ部屋の西表常連さんから、
「お~、生きて帰ってきたか~。えっ、滝も行ったん!!あんた体力あるな~。わしも横断は若い頃に3回やったことあるけど、もうようやらんわ。いや~すごいすごい。」
とお褒めの(!?)言葉を頂いた。
それにしても本当にしんどかった。
マヤグスクの滝上経由の1日横断、・・・もう一度やりたいとは今は思わない。
だが、貴重な貴重な修行の場になったと言える。
人生一度は経験しておいて、損はないだろう。
←クリックお願いします
昨年、西表島の、海(魚、サンゴ)と、山(ジャングル、滝)と、川(カヤック、マングローブ)と、空(夕日、星空)と、暑さに、引き寄せられた私は、西表島にまだまだやり残した事があるような気がして、今年もまた来てしまった。
今回挑戦したのは、『西表島横断(縦断)』である。
ガイドは、島廻遊の長澤さん。
予約の際、マヤグスクの滝にも立ち寄りたい事を伝えた。
当日、8:30。
宿泊していた『いるもて荘』に迎えに来てくれた。
今回は何人で行くのかですかと聞いたところ、「1人ですよ。なかなか1日で横断しようって言う人は少ないですからね~。」
ということで、ガイドさんとマンツーマンだ。
9:00
浦内川からの遊覧船に乗り込み。
乗り込む前に、「何年か前に、1人で山に入った大学生が行方不明になってね、それが今でも見つかっていないんですよ。」とビビらされる。
なるほど。
確かに今からやろうとしている事はそういうことだ。
危険と隣り合わせであることも認識して、緊張感を持って臨まなければならない。
「左手に見えますのが、『オヒルギ』『メヒルギ』『ヤエヤマヒルギ』と言います~」という遊覧船ガイドの声を聞きながら、ひたすらストレッチ。
途中で足が痛くなったら山歩きも楽しめなくなるので、準備は入念に。

9:30
軍艦岩到着。
さあ、山歩きスタートだ!!
カンピレーの滝までは、きれいな遊歩道が続く道。
去年も行ったのでだいたい分かる。
マリュドゥの滝も去年見たので素通り、30分程でカンピレーの滝に到着。

ここからが未知の世界だ。
カンピレーの奥の、登山道の手前で少し休憩。
そういえば、虫除けもヒル除けも、持ってきていない。
大丈夫か!?と不安になるが、「まあなくても大丈夫ですよ。どれだけ対策してても、出るときは出るし、出ない時は出ませんから。」と長澤さん。
そっか、なら大丈夫と信じよう。
ここから先は、400mごとに里程標があり、1番から24番まであるという。

24番は横断道の出口にあるそうだ。
1番が登山口の入り口か、もしくは入ってからあったのかは忘れたが、単純に計算すると、登山道だけで約9kmはあるという計算になる。
この登山道入り口、えっ、こんなとこにあんの!?というところにある。
知っていないと素通りしてしまいそうだ。
そしていきなり急な傾斜。
二本足だけでは進めない。
必然的に、両手で木を掴んだりする必要が出てくる。
しかしこれがまた気の使う作業なのだ。
木の幹には、所々に、赤くて青い気持ち悪い色をしたヤエヤママルヤスデや、触れると強烈な痛みを伴うヤマンギ、等が気持ちよさそうに生息している。
自分の体重を支えようと、あるいはバランスを崩した時にとっさに木を掴むと、こいつらが待ち構えている可能性が充分にあるのだ。
『掴む木は、しっかり見てから掴め。』
これ、教訓。
そんなこんなで歩いていくと、イタジキ川との分岐点に辿り着く。
「横断道はこのまま浦内川に沿って進みます。そしてこちらのイタジキ川を行くとマヤグスクの滝があります。時間的には充分立ち寄る余裕がありますが、完全に寄り道になり、1時間ほどかかってしまいます。どうしますか??」
という長澤さんの確認の言葉。
「もちろん、滝に行きます!!」
ここまで来たからには、滝を拝まなければもったいない。
体力もまだまだ大丈夫!!
というわけで、イタジキ川をジャブジャブ歩いたり、岩場を飛び越えたりしながらマヤグスクの滝を目指す。
滝の直前はかなり細い道なっていて、・・・ていうか道か??これ・・・というような所を進む。
そして目の前に現れたマヤグスクの滝。

・・・しばし感動。

「滝の上まで行きましょうか。」
「えっ、上まで行けるんですか!?」
「結構簡単に行けますよ。階段状になってるでしょ??」
滝の右側をジャブジャブ登る。
ほほう、結構簡単だ。
滑りさえしなければ安全そうだ。

そして滝上に到着。
これまた良い眺めだ~!!

「島のほぼ真ん中にありますからね~、行きたくてもなかなか来れない滝ですよ、ここは。知る人が増えてきたのはごく最近かな。昔は名前すら無かった滝なんですよ。」
滝上で、長澤さんが用意してくれたおにぎりを食べる。
ぎっしり米が詰め込まれた米密度たっぷりのおにぎり。
うまいっ!!
うますぎるっ!!
その後、滝に打たれながら昼寝。
ジャングルの中の高い湿度で、高くなっていた体温が急激に下がっていく感じがする。

最高の気持ち良さ。
ここまでの道程の疲れも吹っ飛び、心も体もリフレッシュ!!
そういえば、長澤さんによると、西表島1日横断で、マヤグスクの滝上まで来たのは初めての経験らしい。
11:50
滝を降りる。
そして滝とさよなら。
またこの滝を見ることはあるのだろうか・・・いや、ないやろな。
再び、浦内川との分岐点に戻り、山道をひたすら歩く。
ここからが最大の難関だった。
普通に歩けないのだ。
途無き途を行く・・・
激しいアップダウン・・・
下に注意を向けていると、頭がガツン。
上に注意を向けると足元がぐらつく。
倒れている木をまたぐ。
倒れている木をくぐる。
ジャングルにいそうなバカデカいクモも、前方に巣を作って待ち構えている。
捕まるはずの木に、あの赤青いヤスデが・・・
高い湿度で、マヤグスクで下げたはずの体温がもうすでに上昇している。
暑い。
そうか、今からが一番暑い時間帯になるな・・・
少し気を抜くと、というよりもすぐに、ガイドの長澤さんが見えなくなる。
どっちだ?
左前方でガサガサと。
こっちか。
40分程歩いて、少し休憩。
いや~助かった~。
ここまで来ると、川の水もそのまま飲める。
「イタジキとの分岐から最初の1時間半ぐらいが、とても歩きにくくてきついんですよ。もう少し頑張ってくださいね。」
たしかにきつい。
しかし、これぐらいでないと張り合いがないのも確かだ。
西表のヤローどもめ、かかってきやがれ~!!
ふたたび歩き出す。
ひたすら途無き途を行く。
土砂崩れで、放置された工事現場のような場所も何箇所かある。
「一昨年の台風と、去年の大雨で、こうなったんですよ。大きな木も倒れましたし、おかげで、横断道はどんどん歩きにくくなってますね。」
そしてさらに40分程歩いて休憩。
体温を下げなければ。
この蒸し風呂で脱水症状になってしまう。
と、長澤さんのリュックからポカリの粉が。
「飲みますか??」
「飲みます飲みます~♪」
川の水で粉を溶かす。
それを2人の水筒の容器で溶かす。
そして飲む。
うまい~!!!!!
なんてうまいんだ。
体の欲するままに飲む。
どんだけ飲むねんっちゅうくらい飲む。
貴重な貴重な電解質摂取。
さすが山歩きを本職にしている方だ。
持参するのものが違う。
ちょっと生き返った。
さあ歩くぞ!!
まだまだ苦しい道が続く。
西表のジャングルが、私に試練を与える。
そしてまた40分程歩いて休憩。
残りのポカリを飲み干してしまう。
「次の休憩は少し長めに取ります。泳いだりできますよ。」
というその言葉に希望を持って、立ち上がる。
・・・立ち上がれ!!
ふと思うと、道がだいぶ歩きやすくなってきた。
慣れてきただけかな??
いや、そうでもない。
「よっこらしょ」という場所が減ってきているのは確かだ。
途中、右側でガサガサと音が。
長澤さんの方向と明らかに違う。
なんだ!?
足を止めて見てみる。
ガサガササッ
やはり何かいる。
デカイ。
とそこに黒い物体が姿を現す。
イノシシだ!!
長澤さんを呼ぶ!!
長澤さん戻ってくる。
しかし、その時にはすでに、奥に行ってしまった。
はっきりイノシシの形が見えた。
間違いなく、イノシシだった。
どうやら辺りを見回す余裕が出てきているようだ。
15:00前後、次の休憩場所に到着。
ジャングルの中の沼って感じの風景。

「泳ぎましょうか」と靴を脱ぎ始める。
お~、靴を脱ぐとこりゃスッとする。
なんとも言えない開放感。
沼に入る。
すぐに深くなる。
立ち泳ぎしながらも、水が気持ち良い。
浅瀬で座っていると、ちっこいエビが食いついてくる。
イタッ!!
「じっとしてると、エビが皮膚の角質層に食いついてくるんですよ。」
イタタタッ!!
かなりの数がいる。
てめーら、網ですくって、から揚げにしてやろうか!!
・・・網ないけど。
再び出発の準備。
靴を履きながら、
「そういえば今日はヒルが一匹も出ないですね。珍しいですよ。」
と長澤さん。
ラッキー♪
日頃の行いが良いからだな。
このまま最後まで出ないでくれと願う。
予定ではあと1時間とちょっとで登山道が終わり、林道に出るらしい。
林道に出れば、そこは車も通れる砂利道。
終わったも当然だ。
もうちょいだ、頑張れ自分!!
道がかなり歩きやすくなってきている。
明らかに。
気分的にも余裕が戻ってきた。
長澤さんとの歩きながらの会話も復活してくる。
と、長澤さんの足が止まる。
いつものクモの巣ではない。
「ここ、いますね。」
見るとそこは木の根っこの中といったところか。
「ハブです。」
よく見ると、顔がある。とぐろを巻いてウネウネしている。
確かにハブだ!!
昼間だからか、お休み中のハブだ。
初めてみた。
「どうしようかな~。」と長澤さん。
「何がですか?」
「こんな道の途中に巣を作ると、いずれ誰かが歩いた時に噛まれる可能性があるでしょ。ここで殺してしまおうかな~。」
なんという頼もしい言葉。
そしてリュックの中から出てきたのは鞘におさまったシャキーンというバカデカイのこぎり。
そのノコギリで、近くにあった竹のような硬い木を鋭く切り落とす。
その竹で殺るのか。
・・・しかし、ハブ、それを察知したのか、さらに奥に逃げてしまった。
「蛇類はね、背骨を折ると動けなくなるんだよ。だからこういうのでバシーっと体の中心を叩いてしまえば良いのさ。今度来た時またいたら仕留めないと。道のすぐ側に潜まれるのは本当に危険だからね。」
思いがけずの生ハブ遭遇。
やはり、危険生物だ。
里程標も20番台に突入し、いよいよ林道までもうすぐだ。
山道最後の休憩を取り、そしてまた歩く。
23番発見!!
あと400m!!
が、この400mが意外と長い。
疲れきっているこの足に、とどめを刺すように道が続く。
あっ、セマルハコガメ。
でも去年もっときれいな甲羅のやつを見た。
砂まみれやから、あんまし美しくない。
・・・本当にあと400mなのか!?
1キロぐらい歩いているのではないか!?
と、急に前が開けてきた。
お~、平坦な道が見える!!
出口か!?
・・・出口だ~!!!!
看板には入口と書いているが、ここは我々の登山道からの出口なのだ~!!
24番の里程標もある!!
山の中、歩ききったぞ~~ぉい!!!!!
(16:30)

充実感、達成感が湧き出てくる。
俺は歩いたのだ!!
西表島のジャングルを横断したのだ~!!
「少し行くと東屋と言われているベンチがありますから、そこで休憩しましょうか。」と長澤さん。

ここでも靴を脱いで休憩。
両足にマメができていて、痛いが、それよりも、この達成感の方が強い。
おっ、そういえばヒルは一匹も出なかったな。
何と言う運の良さ。
しかし、まだ行程は終わりではない。
さらにこの林道を、1時間半ほど歩かなければならないのだ。
これがまたきつかった。
すでに後半から気力で歩いているようなものだ。
ストライドは小さくなり、足の回転も遅い、足の裏のマメは気になる・・・
しかし、ガイドの長澤さんは淡々と同じペースで歩く。
ちょっと速いんじゃね??と思いながらも、最後に妥協はしたくないと思い、頑張って付いて行く。
・・・やたらと蝶が多い。
蝶の天然博物館のようだ。
そして歩いていくと・・・素晴らしい眺めの展望台が!!!!
ただひたすら緑の絨毯のようなジャングルの中に、仲間川が大きくうねっている。
その向こうにはもちろん海が見える。

・・・言葉を失う。
人間のちっぽけさ、西表島の雄大さを、強烈に感じる。
・・・・・・
その後もさらに林道を歩き、パパイアの木や、パッションフルーツの木、天然では世界に3箇所にしか生えていないというヤエヤマなんとかという木を見ながら、18:15頃、大富の、車で入れる所にまで着いた。
18:30
迎えの車に乗せてもらい、いるもて荘まで送ってもらった。
今回の経験で、精神面、体力面、共にかなり鍛えられたように感じる。
この先、何があっても、生きていけそうな気がする。
そんな素晴らしい思いにさせてくれた、この西表島に感謝したい。
そして、そんな西表島の山の中を、懇切丁寧に教えていただいた、島廻遊のガイド、長澤さんに、厚く厚く御礼申し上げたい。
長澤さんがいなければ、今日の1日は無かった。
本当にありがとうございました。
(→島廻遊のHP)
いるもて荘に帰ると、
同じ部屋の西表常連さんから、
「お~、生きて帰ってきたか~。えっ、滝も行ったん!!あんた体力あるな~。わしも横断は若い頃に3回やったことあるけど、もうようやらんわ。いや~すごいすごい。」
とお褒めの(!?)言葉を頂いた。
それにしても本当にしんどかった。
マヤグスクの滝上経由の1日横断、・・・もう一度やりたいとは今は思わない。
だが、貴重な貴重な修行の場になったと言える。
人生一度は経験しておいて、損はないだろう。
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nagasawa |
2008年09月16日(火) 22:08 | URL 【コメント編集】
コメント有難うございます!!
リンクはもちろんOKです。
色々思い出しながら書いたら、こんな文章になってしまいました。
横断の想いや、その状況が伝われば幸いです。
そして、書いて、読んで、あらためて余韻に浸っています。
素晴らしい体験を有難うございました。
ピアノは気分転換でやってます。
これもまた面白いですよ~。
リンクはもちろんOKです。
色々思い出しながら書いたら、こんな文章になってしまいました。
横断の想いや、その状況が伝われば幸いです。
そして、書いて、読んで、あらためて余韻に浸っています。
素晴らしい体験を有難うございました。
ピアノは気分転換でやってます。
これもまた面白いですよ~。
T.H. |
2008年09月17日(水) 22:12 | URL 【コメント編集】
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あと、サッカーの話は聞いてましたけどピアノもお上手なんですねー!自分は音楽関係はからっきしなので感心します!